2012年3月7日水曜日

GONJASUFI『A SUFI & A KILLER』

正直、最初はGONJASUFIもTHE GASLAMP KILLERも
「まあLOW END THEORY周辺のFLYING LOTUSみたいなお洒落な感じでしょ」
って感じで大して聴いた事もないのに(LOW END THEORY周辺にしてもFLYING LOTUSにしても)かなり穿った見方をしていたんです。
THE GASLAMP KILLERに関しては
「アート・ワークがかっこいいな~」
ぐらいの印象しかなくて肝心の音は全く耳にしたことがありませんでした。
なので数年前にLOW END THEORYのJAPAN TOURで来日したときも僕は完全にスルーしてしまっていたんです。



そんな中、ちょうど去年の3月に大石始さんと吉本秀純さんが監修された『GLOCAL BEATS』という本が発行されました。
GLOCAL」とはGLOBALとLOCALを掛け合わせた造語で、これは「ゼロ年代以降のボーダレスな音楽を集めた世界初のガイド本」という趣旨で制作され、既存のワールド・ミュージックのガイド本には載っていないようなクラブ世代の民族音楽が紹介されています。

内容が本当に素晴らしく、ちょうどその頃に興味を持ち始めたサイケ・レーベルFINDERS KEEPERSの主催Andy Votelや、僕が高校時代から愛して止まなかった旅する音楽家Manu Chaoのインタビュー、SUN CITY GIRLSのAlan Bishop率いるレーベルSUBLIME FREQUENCIESの特集、前回紹介したBALOJIなども含むアフリカ音楽のコラム、デジタル・クンビアの総本山ZZKの特集…何度も読み返して、この本をもとに音源を漁って、今も僕にとってはバイブルのような本です。
で、この本にTHE GASLAMP KILLER(以下GLK)のインタビューが載っていたのですが
「インドの音楽も一種のビート・ミュージックだと気づいた」とか
「トルコのレコードが一番ヤバイと思う」とか
「いいネタを見つけても『マッドリブが同じレコード買っていったよ』と言われると悔しいよね(笑)」
みたいな感じでこれがメチャクチャ面白かったんです。
THE GASLAMP KILLER

しかも彼はFINDERS KEEPERSの累計20タイトル・リリースを祝して『ALL KILLER - FINDERS KEEPERS 1-20 MIXED』というMIX CDまで発表しています。
FINDERS KEEPERSの各タイトルから選りすぐった曲を集めて作ったこのMIXがまた普通のレーベル・サンプラーという感じが全然なくて、過剰なエフェクト、サイレンなんかをふんだんに使ったDJならではの観点で作られた作品で物凄く刺激的に仕上がっていました。




(↓短いですが少しだけ雰囲気がわかります)
THE GASLAMP KILLER
そんな訳で、まあ案の定気付いたら僕はズブズブとGLKの魅力にすっかりはまっていったのでした。






(↓GLKのMIX視聴できます。)






GLKの10inch『Death Gate EP』の2曲目に、エチオピア・ジャズ(MAHMOUD AHMEDの「Neshtie」)のサンプリングが最終的にノイズに変化していく「When I'm In Awe」という怪しげなトラックがあります。
(↓『Death Gate EP』もこれで全曲視聴できます。)

この曲に更に怪しい雰囲気を上乗せしているゲスト・ボーカルが今回ご紹介するGONJASUFIだったんですね。
THE GASLAMP KILLER & GONJASUFI 




早速彼のことを調べてみるとele-kingのこのインタビューを見つけました。

ヨガの先生をしながらガンジャを吸い、
実験的なヒップホップを作りながらサンディエゴの大学でイスラム文化を学び、
ガンジャ+スーフィー(イスラム教の中の神秘主義)で自らを「GONJASUFI」と名乗る…
とにかくどう考えても怪しい人物像しか見えてきません(笑)。

GONJASUFIはサンディエゴでメキシコ人の母とエチオピア人の父の間に生まれます。
10代の頃からマリファナに傾倒し始め、次第に音楽にのめり込んでいったようです。
(彼はフェイバリットにIce CubeToo $hortなどのヒップホップ勢だけではなくJimi HendrixBeth Gibbonsなどもあげています。)

20代になると自身が所属していたヒップホップ・クルー「Masters Of The Universe」で活動し、Sumachという名義で自主制作の音源作りもスタートさせています。

その後サンディエゴのクラブで先述したGLKや、Sound in ColorレーベルオーナーのMAINFRAMEと出会ったことで彼に大きな転機が訪れます。
GLKとの共演を見てGONJASUFIに興味をもったFLYING LOTUSがMAINFRAMEを通じて彼に制作したビートを送り、GONJASUFIがそのトラックに歌を乗せ「Ancestors」というトラックが作られます。

そんな音楽的なつながりの中でGONJASUFIへの注目はどんどん上がっていきます。
1stシングルがいきなりNew York TimesやMojo、NMEといった名だたるメディアやラジオで特集され、Thom Yorke(RADIOHEAD)などからも賞賛を受け…
まさに「待望の」といった感じだったのでしょうか、2010年にWARPから発表されたのが今回紹介する1stアルバム『A SUFI & A KILLER』です。




トラック・リストは
GONJASUFI 『A SUFI & A KILLER』
1. (Bharatanatyam)
2. Kobwebz
3. Ancestors
4. Sheep
5. She Gone.
6. SuzieQ
7. Stardustin'
8. Kowboyz&Indians
9. Change
10. Duet
11. Candylane
12. Holidays
13. Love Of Reign
14. Advice
15. Klowds
16. Ageing
17. DedNd
18. I've Given
19. Made
20. Dobermins
Bonus Tracks For Japan
21. Ancestors (agdm Mix)
22. Robots


このアルバムではGLKがほとんどの曲のプロデュースを担当しています(他はFLYING LOTUSが1曲、MAINFRAMEが4曲)。

アルバムは冒頭、スーフィーの音楽だという呪術的な1曲目「(Bharatanatyam)」から、2曲目の「Kobwebz」へと流れていくのですが…これがもう鳥肌もののかっこよさです。
この曲ではGLKによってトルコ・ロック界の重鎮Erkin Korayの「Yagmur」という曲が大々的にサンプリングされてます。


そして先程のFLYING LOTUSと共作した「Ancestors」や


まるでTom Waitsやビートルズの様な「She Gone.」、



The Stoogesの「I Wanna Be Your Dog」のギター・リフを使った「SuzieQ」、



などなど…
曲数も多いのですがほとんどの曲が2~3分前後と短めで本当に多様なハイブリット・ミュージックの数々のため全然飽きる事無く聴けます。


このアルバムは発売前から英国のガーディアン紙が「今年何回も繰り返し聴くであろうアルバム」、
「Screamin' Jay HawkinsがM.I.Aをカ ヴァーし、それをPortisheadが素晴らしくリミックスしているかのよう」と大絶賛していたそうです。




その後GONJASUFIは同じくWARPから2010年にWARP関連のアーティスト達によるリミックス・アルバム『Caliph's Tea Party』、
2012年に全曲を自身でプロデュースしたミニ・アルバム(といっても10曲も入ってます)『MU.ZZ.LE』を発表して人気を不動のものにしました。
(『MU.ZZ.LE』の発売に先駆けフリー・ダウンロードEP『The Ninth Inning EP』を発表しています。)
Gonjasufi - The Ninth Inning EP by Hydroshare Distribution




『Caliph's Tea Party』や『MU.ZZ.LE』で描き出されている極限までダークなNYダブ~イルビエントといわれるような世界観も良いのですが、やっぱり僕は『A SUFI & A KILLER』の雑多な感じにひどく惹かれます。
GLKが好きですしね(笑)。この二人の組み合わせでまた何かやってくれないかなぁ、と期待しています。

(GLKとGONJASUFIの共演。GLKがオープンにかけるAmral's Trinidad Cavaliers Steel Drum Orchestra「The World Is A Ghetto」の上でのGONJASUFIのフリー・スタイル)







THE GASLAMP KILLER - Official Website

THE GASLAMP KILLER - MySpace



GONJASUFI - Official Website

gOnj@$ufi (opn24hrs) - MySpace




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