2012年3月2日金曜日

BALOJI 『KINSHASA SUCCURSALE (+2)』

数年前、まだ大学生だった頃にいつも遊んでいた後輩が


「コンゴで親指ピアノを電子化してミニマル・テクノとかエレクトロニカみたいな音を出すバンドがいるらしいっすよ。」

という話を始めました。
僕も興味津々で色々聞いてみると、彼らは「Konono Nº1」というバンドでコンゴの親指ピアノ「リケンベ」を廃材などを使ってエレクトリック化して演奏をしているとのことでした。

Konono Nº1

後日、早速そのKonono Nº1の音源を聴いてみると、彼らの演奏するリケンべの音色は激しく歪み(インダストリアル・ミュージックの様)トランシーで…想像以上にスリリングなものでした。
この特殊な音は騒音の激しい街中で人々を踊らすために生まれた独自のスタイルの様です。

当時の僕はこの力強いKonono Nº1の音楽をすぐに気に入ってしまったのでした。



調べてみるとKonono Nº1の歴史は意外に古く1969年頃に現在もメンバーであるマワング・ミンギエディによって結成されています。
戦争によってオリジナルメンバーのほとんどが行方不明になってしまいますが、ミンギエディが自分の息子や孫を参加させてバンドを再生したそうです。


そしてその年、アルバム『CONGOTRONICS』は瞬く間に世界中で熱狂的な支持を受けました。




その後シリーズ化された同じく『CONGOTRONICS』の第三弾で大々的に紹介された「KASAI ALLSTARS」や、

KASAI ALLSTARS
小児麻痺で下半身不随となった車椅子ミュージシャンによるバンド「スタッフ・ベンダ・ビリリ」など新時代のコンゴ音楽に注目が集まっていきます。

スタッフ・ベンダ・ビリリ
(スタッフ・ベンダ・ビリリを取り上げた映画『ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡』もとても素晴らしい内容でした。)







話がだいぶそれましたが、たしか一昨年の終わり頃にKonono Nº1がバック演奏をつとめるBALOJIというラッパーがいるという情報をネットで見つけました。


で、これがPVなのですが…いやかっこよすぎまして。
このコンゴ共和国の首都キンシャサのストリートで撮影されたPVがかなり話題を呼んでいたみたいでこの曲を収録したアルバム『KINSHASA SUCCURSALE(キンシャサ出張所)』をその年の年間ベストにあげていたライターさんも多かったです。


BALOJIは1978年にコンゴ(当時はおそらくザイール共和国)南部のルブンバシで生まれます。3歳のころに父親とともにベルギー南部のワロン地方に移住し、16歳で家を出てラッパーとしての活動を本格的に開始しています。
96年にはベルギーを代表するヒップホップ・グループとして知られるStarflamの一員BALO a.k.a Jackson Le Badとしてデビュー。
数枚のアルバムを発表して成功を収めた後、2003年にはグループを脱退します。


翌年からはBALOJI名義でソロ・ラッパーとしての活動をスタート。

2007年に、P-FUNK鍵盤奏者/ボーカリストのAmp FiddlerやMarc Moulinが参加した1stソロ・アルバム『Hotel Impala』をEMIベルギーから発表します。
こちらは本作ほどコンゴを意識した作りではなかったようでニュー・ソウル系のヒップホップといった感じの内容だったようです。

そして2010年コンゴ民主共和国・独立50周年の年に合わせてキンシャサ録音の2ndソロ・アルバム、今回ご紹介する『KINSHASA SUCCURSALE』を発表します。


トラック・リストは
『KINSHASA SUCCURSALE (+2)』
1. Le Jour d'Apres/Siku You Baabaye (Independance Cha-Cha) (avec Royce Mbumba)
2. Tshena Ndekela / Entre Les Lignes (avec Monik Tenday)
3. Karibu Ya Bintou (avec Konono Nº1) 
4. Congo Eza Ya Biso (Le Secours Populaire) (avec La Chorale de La Grace)
5. De l'Autre Cote De La Mere
6. A l'Heure d'Ete / Saison Seche (avec Larousse Marciano)
7. La Petite Espece (Bumbafu Version)
8. Nazongi Ndako (Part 1) (avec Zaiko Langa-Langa et Amp Fiddler)
9. Nazongi Ndako (Part 2) (avec Royce Mbumba)
10. Kyniwa-Kyniwa (avec Bebson De La Rue)
11. Genese 89
12. Tout Ceci Ne Vous Rendra Pas Le Congo (Part 1)
13. Kesho (avec Moise Ilunga)
14. Karibu Ya Bintou (dEbruit remix)
15. Independance Lpendance Cha Cha (G77 remix) with Blitz the Ambassador /Joya Mooi /Freddy

(こちらは同アルバムに
Remix曲を2曲追加して2011年クラムド・ディスクより再リリースされたものです。)


先述した3曲目「Karibu Ya Bintou」の他にも
冒頭1曲目「 Le Jour d'Apres/Siku You Baabaye」では50年代~60年代にルンバ・コンゴレーズ(日本ではリンガラ音楽とよばれる)の黎明期に活躍したGrand Kalleの1960年に発表した代表曲「Independance Cha-Cha(独立のチャチャ)」
をそのGrand KalleよりもさらにベテランWendo Kolosoyの後期バック・バンドを務めた年配のプレイヤーが参加し、現代風に再構築してカバーしています。
(僕はこの曲が大好きでよく色々なところでかけているので個人的な知り合いの方は聴いたことがあるかもしれません。)
8曲目「Nazongi Ndako」では前作に引き続きAmp Fiddler、そしてZaiko Langa Langa(「ルンバ・ロック」を生み出したPapa Wembaがプロとして初めて加入したグループ)が参加。こちらはMarvin Gaye「I'M GOING HOME」のフレーズを引用しソウルフルなナンバーに仕上がっています。






BALOJI自身はコンゴ出身者ではありますがその人生のほとんどを移民先のベルギーで過ごしており、自らを「アフロピアン」と呼びます。
ラップの文脈で活動してはいるが、彼の背景はにある音楽経験は幅広い。「PiLや、Kraftwerk、Queens of the Stone Age、The Smiths...」など、あらゆる音楽に触れてきたと述べている。
▲「「アフリカの今の音を作りたい」 - コンゴの新星Balojiに注目」SOCIAL SOUNDSCRAP
というような発言からもわかるようにこのアルバムは幅広い音楽に触れヒップホップを超えた「新しいコンゴの音楽」、延いては「全く新しいアフリカの音楽」を作り上げようとした試みにも思われます。
その証拠に、この一見「ルーツへの回帰」にもとれる今回のレコーディング体験をBALOJIは「未来への回帰」と位置づけているようです。




またBALOJIはソロ活動の他にDamon AlbarnAfrica Expressプロジェクトにも参加し幅広い活動を行なっている様です。
今後のBALOJIが一体どんな新しい音楽を作っていくのか、楽しみでなりません。


最後に今回再発売に際して収録された「Karibu Ya Bintou」のフランス人プロデューサーdEbruitによるRemixも素晴らしいので是非ご一聴を。



▼Baloji - Official Website

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